くろばらのブログ。
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また、書いてみた。竜馬×以蔵
ちょっと報われない。暗いのがすきなんです。
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「お前、さ、いつか死ぬぞ。」
そう言って、情けない程顔をしかめた友人は、ぎゅっと俺の手をにぎってきた。
「りょ、竜馬ァ・・・。」
その大きな手に、どうしていいかわからず固まる。
あたたかい。
・・・ダメだ、このあたたかさに、安らぎを感じてしまっては。
「…離せ、竜馬。」
「いいや、離さない。」
竜馬は、更に握った手に力を込める。
「っ…!ダメだ!」
嫌だ、とその手を振り払おうともがく。
しかし、体格の差もあるのか竜馬はびくともしない。
俺だって力には自信があるのに・・・。
むきになって、更に力を込める。
「以蔵!!」
大きな声に、一瞬身体がビクついた。不可抗力だ。
その一瞬の隙に、竜馬は俺を抱きしめてきた。
見上げると、険しい竜馬の顔。
「以蔵、聞け。」
竜馬は、俺を抱きしめる腕にちからを込めて、首もとにその額をすりつけてきた。
「りょうま・・・?」
いつもと違う態度に、どうしていいかわからない。
あたたかい。
竜馬にすっぽりと抱きこまれた。
微かにする、磯の香り。桂浜で、よく嗅いだ匂いだ。
「以蔵・・・」
耳元で、竜馬の心地よい声。
顔に熱が集まるのが、自分でも分かった。
それを知ってか、知らずか、竜馬はそのまま話を続ける。
「なぁ、以蔵、お前は今のままでいいのか?」
「お前が武市の兄者を敬愛してるのは分かってる。」
「でも、でもな、以蔵。自分の頭で考えるのをやめちゃダメだ。」
「以蔵、兄者から、ちょっと、ちょっとだけ、離れてみないか。」
「以蔵、自分で考えるんだ。自分の頭で。」
・・・初めて見る、竜馬だった。
いつもの、あの、軽薄な口調もなくて、声も、すこしだけ低い。
なんなんだ。一体。
先生から離れろ?自分で考えろ?
・・・無理だ。無理だ、竜馬。そんなこと、俺に出来るわけがない。
でも・・・
(竜馬・・・あたたかい、な・・・。)
低い声も、力が込められた腕も、磯の香りも。
じわりと自分の中に、やさしく侵食してくる。
「以蔵・・・頼みがあるんだ。」
ああ、この男の言うことなら、聞いてみるのもいいかもしれない。
このあたたかさが、名残惜しい。
「・・・なんだ。」
断ったら、もう二度と竜馬に会えない気がした。
このあたたかさを失う気がした。
きっと、先生は怒るんだろうな。
先生には、あとで叱ってもらおう。
しょうがないヤツだ、でも、竜馬に頼まれたなら、仕方ない。
そう、言って、困った顔で笑って、俺の頭をなでてくれる。
きっと。
お小遣いは、もらえないかもしれない。それは、ちょっと困るけれど。
「ある人の、護衛をして欲しいんだ。その人の下で、お前も、少し、自分で考えてみるんだ。」
な?と、そう言って竜馬は俺の頭を撫でてくる。
その手は、武市先生とは全く違う。でも、やっぱり、あたたかい。
「ある、人?・・・誰だ?」
ああ、やっぱり、先生には怒られるんだろうな。
でももう、竜馬の頼みを断るという選択肢は、俺には無かった。
暖かさが、恋しかった。
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